北アルプス「蝶ケ岳」「常念岳」の記録

期間:2007年8月24日(金)〜26日(土)



                                                  渡辺(記)



■山  名:蝶ヶ岳(2677m)・常念岳(2857m)



【8月24日】

豊科ICから北に向かい5,6キロ進むと、須佐渡渓谷のホリディ湯の駐車場に着く。

本来ならこの先の三股駐車場まで車が入るのだが、去年の水害で崩落が起き現在は入れずタクシーで行くことになった。車賃3000円を叩く。

登山ルート 

 24日、午前6時10分三股登山口(1275m)から蝶ヶ岳に向かう。

山に入るとすぐに金網の橋を渡る。右手は常念方面、左が蝶ヶ岳である。

烏川の瀬戸を左に見ながら緩やかな道が続く。1400mに差し掛かると、最後の水場となる「力水」が滔滔と地割れから流れ出している。

文字通り力水を得て勇躍歩を進めてゆく。周りはカエデや楢、唐松の樹林帯となる。ジージーと蝉が鳴き時折ウグイスが鳴いている。8時20分頃1900m地点の「まめうち平」を過ぎる。

周りはうっそうとしたシラビソの原生林で、しばらく平坦な道を歩む。10時50分頃、旧ベンチと書かれた2350m地点を通る。

この辺りから蝶沢越しに常念岳の全容が見え隠れするようになってくる。

11時過ぎ、2500m地点の最後のベンチを過ぎると、今までの急攀な登りがやや緩やかになり、ほっと一息つける。

このような状況を15分ばかり進むと、パット視界が開け大滝小屋への分岐に出る。

周りは夏の盛りを過ぎたお花畑が広がる。

百花繚乱

名残りのハクサンフウロ(コザクラかも)やゴゼンタチバナが真っ赤な実をつけ、大きな葉っぱのキヌガサソウがユリ根のような実をつけている。

一方ではトリカブト、ミヤマリンドウが秋を教えてくれている。

ハイ松の林を抜けると蝶ヶ岳ヒュッテが目に飛び込んでくる。

12時、快晴、微風、抜けるような天の碧、目の先には左から槍・中岳・南岳、キレット、北穂高・涸沢岳・奥穂高・前穂高・明神岳など3000m級の北アルプス主峰が屏風図のように展開している。

更に乗鞍岳、その奥に御岳の巨峰が天空に浮かんでいる。

700円で500mlのビールを買う。火照った五臓六腑を流れ落ちるビールは美味い。

相棒はテントを設営、私は小屋泊まりなのでそれぞれ別行動となる。

蝶ヶ岳は2677mであるが、三角点は2664mしかも数キロ離れたところにあるから瞑想してしまう。

テント場

横になると上下のまぶたがすぐにくっつく。

夜立ちのツケが出てきたものだ。

夕食はうなぎの蒲焼、ワカメの和え物、あさりといんげんの和え物、柴漬け、味噌汁、デザートなど山小屋の食事としては上の部類かもしれない。

昼食の弁当込みで1万円。

当日の宿泊客70人超。最大250人が泊まれるという。

水1l150円、ペットボトル400円、お湯1l200円、天上の物価である。



【8月25日】

25日、午前1時、起き出して星空を見る。

シャワーのように降り注ぐ満天の星空、眼下には豊科、明科、松本などの町の明かりが眩いばかりに輝き、地上と天空の光のコラボレーションは素晴らしい。

5時13分東の空、四阿山の槍の左側に豆坪ほどの暁光が見えた。

1分も経たない間にまん丸な朝日になり、その光が槍や穂高の山並みにあたり赤く染め始める。

モルゲンロートである。

 蝶ケ岳ヒュッテより槍ヶ岳遠望

上部3分の1ほどが紅をつけたように染まってきた。

それも数分の光のページェントである。5時40分小屋を出発、小高いところにある瞑想の丘に寄る。

展望表示板を見ながら瞑想すればどんなことが沸いてくるのか、時間がなく記念写真だけで終わった。

なだらかな稜線を進み6時25分にその三角点に着く。

ここからシラビソやダケカンバの林の中を上り下りしながら7時5分蝶槍のトップに立つ。

気温が上がってきたので遠景が悪くなっているが、富士山が南に鎮座し、その前に北岳や仙丈などの南アルプス、東に八ヶ岳、さらに浅間山、四阿山などの展望が見える。

うらしまつつじやカラマツの林を登下降しながら小さな地塘を経て、2512mの最低鞍部に7時50分着く。

ここで小休憩をとる。ここから林の中を急登下降の繰り返し、9時10分、ごつごつした花崗岩の前山に取り付く。

巨岩が累々する前山から見あげる常念岳は来るものは拒まずと泰然としている。

常念岳への道

下から見上げると大きな岩石が覆いかぶさって見えた中間点に9時40分着く。

軽い食事をとり最後の登りにかかる。

胸突き八丁石を掴み地を這うように高度を上げる。

11時やっとの思いで2857mの常念岳の天辺に着く。

ゴツゴツした岩石が積み重なった頂上部である。

槍や穂高の山並みは見る角度を変えるたびに表情が違う。

涸沢岳のトラバースや前穂の小屋が見える。屏風岩から伸びる尾根も尾根道がはっきり見えるほどである。

頂上からの展望は広がり遠くに、燕岳、大天井岳、立山、野口五郎岳が広がり、キレットの奥に笠ヶ岳の山容が見える。

南や東側には上州や日光の山々、丹沢山まで展望できる。

こころ行くまで展望を楽しみ、11時30分前常念岳を経て降りるコースをとり帰路に着く。

常念小屋は常念岳を急降下した鞍部にあり、小屋の赤い屋根が平べったく小さく見える。

その左は常念乗越の急坂が立ちはだかっている。

今日は常念小屋泊まりの予定であったが、時間もあるので急遽山を下りることにする。

前常念岳尾根コースを下ることにした。

ここから途中一緒になったつくばの根田さんも同行することになる。

巨岩の下り道は石を飛び越え跳ね越えしながら前常念岳、石室跡に午後12時15分に着く。

さらに巨岩の下り道が続き、両の足の筋肉が泣き出している。

石場を更に1時間下り、やっとの思いでシラビソの樹林帯に入ったのは1時15分であった。

カンカン照りに焼かれた露出部はひりひりと痛み、体はカッカッと火照り、日陰の多い樹林帯に入り少しは救われる思いである。

ここからのコースタイムは2時間であるが、行けども行けども三股の登山口が届かない長い下りである。

1時間超の3時間かかって登山口にもどる。

タクシーは4時の約束だったので大幅な遅れになった。

疲労困憊の状態で車を運転して帰るのは危険と判断し安曇野のホテルルートイン安曇野に泊まることにした。

実は冷たいビールが飲みたかったためであるが結果的には、大正解であった。

ホテルに入りビールを飲んで眠りに着くと、爆睡である。

【8月26日】

26日、午前3時にホテルを出発長野道、関越、北関東、国道50号線経由で水戸に7時半に到着する。

天気に恵まれ気心の知れた山仲間との山行、神様がしっかり見てくださっていた、何事もなく筆舌に尽くし難い天上の大パノラマ、そこへ行った者しか味わえない贈り物である。


2007.8.24.25.26.宮本氏同行


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