残雪期の「朝日連峰」


平成20年5月、梁山泊倶楽部が幾たびか訪れている残雪期の「朝日連峰」山行を実施した。


                                                    宮本記



■日 程:平成20年5月3日(土)〜5日(月)
■参加者:爺(L)、若(SL)、殿、上様の4名
■装 備:
 (共同)スコップ2丁、スノーソー1丁、ブルーシート3枚、5人用コッフェル、ストーブ3台、
     燃料(ガソリン、ガス)、食糧(3日分+非常食)、地図・コンパス、GPS
 (個人)ピッケル、ストック、アイゼン、寝袋、着替、手袋(予備)、帽子、スパッツ、サングラス、
     日焼け止めクリーム、防虫剤、雪山用靴、行動食糧、予定表(登山届)



■5月3日

 02:00 我々の本拠地である茨城県水戸市を出発

       常磐道・磐越道・東北道・山形道を経て、古寺鉱泉駐車場(登山口)へ向かう。

       高速道を降りて、途中の古寺集落から鉱泉までの道程には、フキノトウがたくさん芽

       を出しており「帰りに少し戴いていこうか」と話しながら運転してきた。


 07:25 古寺鉱泉駐車場到着

       山形道を途中で1回降りて給油した割に、予定通りの到着であった。駐車場脇の斜

       面にはまだ残雪があり、雪が落ちてきても被害のないような場所を選んで車をとめ

       た。

 08:10 古寺鉱泉駐車場出発

       いつものように、はやる気持ちを抑えながら全員の準備が終わるのを待って出発し

       た。


 08:15 古寺鉱泉(鳥原山コースと古寺山コース分岐)

       鉱泉前で記念写真を撮るなどして、いよいよ雪の山へ一歩を踏み出す。古寺鉱泉

       前の小さな木橋を渡らずに左方向へ進むのが鳥原山への道である。すぐに鉱泉裏

       山の急な斜面をジグザグに登っていく。取り付き点に残雪がたくさんあって、登り口

       がわかりにくかった。


 10:00 畑場峰付近

       残雪の楽しいこの時期に幾度か登っているが、もう少し楽で距離も短いと感じてい

       たが、意外と時間を必要とした。もっとも雪がかなり締まっており、歩くには最適の

       時期である。皆でワイワイと話しながら、そして楽しみながら行程をこなしてきた。


 13:00 鳥原小屋到着

       途中、小朝日岳や大朝日岳が見える場所ではカメラを取り出して、お互い記念写真

       を撮りあうなど、最高の気分で周囲の景観を楽しみながら前進していった。男女二

       人連れの登山者が我々を追い抜いていったが、鳥原山目前では前進ぜずに休ん

       でいた。ルートがよくわからないのかもしれないなと感じた。

       一旦大きく下り、目前の雪の斜面を登り切ると右手に鳥原山、左手のこんもりとした

       樹林のなかに今宵の宿「鳥原小屋」が見えた。何度利用しても、とてもいい小屋だと

       思う。とくに、新築した現在の小屋は地元の方々の大切にされていることもあって、

       とても綺麗だし、整理されている。


 13:00〜16:00 到着の祝宴

       今宵と明日用の水をつくるために小屋の外から雪をとってきた。小屋には炊事用ガ

       ス台がいくつも用意されており、至れり尽くせりである。コッフェルで雪を溶かしなが

       ら、持参したたくさんの飲み物を取り出し、まずは乾杯である。梁山泊倶楽部の最

       強メンバーが参加した山行であり、持参した飲み物はふんだんにある。この山小屋

       には管理人が入っており、料金@1,500円也を支払った。他の宿泊者や管理人と呉

       越同舟となり、祝宴を張ったのは言うまでもない。


 16:30 鳥原山山頂へ

       祝宴のあとは今日の締めくくりの仕事として鳥原山山頂までの散策(酔い醒まし)が

       残っている。ふらつく足を登山靴に入れてストック持参で、息を切らしながら山頂へ

       向かった。

       まずは山頂、そして展望台へと向かう。明日向かう小朝日岳への雪尾根が眼前に

       睥睨している。さらにその奥に大きく聳える大朝日岳が夕陽に映えて神々しい。右

       の肩にはゴマ粒ほどに大朝日岳山頂避難小屋が見える。

       この同じ場所に、平成元年5月の連休に爺の妻と二人の娘が立った。そのときは朝

       日鉱泉(ナチュラリストの家)登山口から入山し、間違えて白滝口へ下山してしまっ

       た。登山道などない雪の上を歩くための過ちであった。幸いに山菜採りのご夫婦に

       軽トラックの荷台に家族4人を便乗させていただき、朝日鉱泉まで送っていただい

       たことを思い出す。子供たちは二人ともまだ小学生であった。

       山頂漫歩から戻った後も食事をしながらさらにほろ酔い加減になったことはいうまで

       もない。何時に寝たかは定かでない。


■5月4日

 02:00 起床、炊事、準備

 04:00 鳥原避難小屋出発

       昨夕に辿った雪の上を今日は暗いうちから登り始める。朝の冷え込みもあってビブ

       ラム底の雪上歩行が楽である。とはいえ、昨日の酔いが残っている面々である。

 04:40 鳥原山山頂到着

       目指す小朝日岳への稜線、そして白銀がくっきりの大朝日岳と避難小屋が視認で

       きる。「今日もいい天気になりそうだ!」。

 04:55 鳥原山山頂出発

       いつ来ても小朝日岳までの尾根は見た目よりは長く、かといって、うんざりするほど

       でもない。大分進むと右手の古寺山付近に、大きくて黄色いドームテントが見える。

       小寺山コースで登ってきたが、途中で日暮れを迎えて幕営したようだ。

       小朝日岳山頂付近には大きな雪庇が張り出している。2階建家屋ぐらいの容積が

       あり、誰も登っていない場合には、雪庇にスコップで穴を開けて登るか、雪を開削し

       て登らねばならない。幸いにも直下の岩場をロープで上がり、その上にも難なく登れ

       てしまった。

 06:10 小朝日岳山頂到着

       狭い山頂であるが、古寺山方面への尾根筋には雪庇が東側に、いまにも落ちそう

       に引っかかっている。この頂上直下の尾根にも小さなテントを張った年配の二人組

       がいた。この二人はここから大朝日岳をピストンするとのことで、サブザック姿でス

       パッツもつけずに出発した。

       我々は周囲を撮影し、飲み物や行動食を口に放り込んで早々に出発した。


 06:20 小朝日岳山頂出発

       いよいよ大朝日岳へ向かって出発する。小朝日岳山頂から熊越へむかう尾根には

       雪はなく、冬には相当風の強いところのようだ。

 06:45 熊越通過

       熊越とはその名のとおり、熊が越えるにも厳しいところというのだろう。今日は下る

       一方であるが、明日は登り返すことになる、やれやれだ。途中、古寺山方面へのト

       ラバースの道標を通過する。積雪期は山の斜面を通過するので、当然雪も深いし、

       雪崩も発生することから立ち入ることはできない。雪のない時期なら往復の片一方

       は通ってみたいものだ。

       熊越の鞍部に下りると小さな雪庇の残る登山道が現れる。雪庇の脇を注意しなが

       ら前進する。また少し進むと大きくて急な雪田が現れる。夏なら下部が金玉水となっ

       て水のとれる場所である。斜面の下部は結構きつく、キックステップで登山靴を蹴り

       込みながら登っていく。アイゼンを装着するほどではないが、滑落の不安ある人は

       面倒がらずにアイゼンをつけなければならない。雪田の斜面を登り切り、緩やかな

       アップダウンの徐々に繰り返して登っていくと、行く手に大朝日岳山頂避難小屋が

       目に飛び込んでくる。

 08:20 大朝日岳山頂避難小屋到着

       大朝日避難小屋は、平成16年の同じ時期に利用させてもらって以来である。鳥原

       小屋を夜明け前に出発して大朝日小屋へ到着したが、目の前の大朝日岳山頂から

       小屋にかけてガスと強風が吹き上げている。山小屋の周囲は雪がなく岩と土がむ

       き出しになっている。ここは、それほど北西から吹きつける風で、雪が積もらない場

       所なのだ。まず、我々の今宵の寝場所を確保するため山小屋内に入った。この山

       小屋は少し湿気がこもるようだ。1階には湿気防止のためか断熱材が敷いてあっ

       た。2階に上がったがこちらも薄い銀マットが敷いてあった。昨夜の宿「鳥原小屋」と

       比較する。と少し落ちるようだ。山小屋内部の片付けもイマイチの感がある。先に入

       った宿泊者や後から来たパーテーなどは、利用者名簿に記入せずに無賃宿泊のよ

       うだ。(ここ数日の記入はまったくなかった)我々は、山小屋利用料金と梁山泊倶楽

       部のメモを付して@1,500円×4人=6,000円也を料金箱に投入した。飲料水用の雪

       をポリ袋にとって2階に上げる。


 09:00 大朝日岳山頂

       強風が吹き荒れる状態であったが、大朝日岳山頂を踏まないのも癪なので4人で

       山頂を目指した。小朝日岳からピストンのご夫婦や他の宿泊者も、山小屋のすぐ上

       にある山頂へ登ってきた。飛ばされそうな強風ではあるが、周囲はガスが晴れて素

       晴らしい。白くて大きい月山、目の前の西朝日岳からから先に続く朝日連峰の縦走

       路稜線、特徴ある祝瓶山など、風さえ吹いていなければいつまでも眺めていたいと

       ころだ。若、殿、上様、そして爺たちのペラペラのヤッケが風に煽られ、まるでバイ

       クにまたがってすっ飛ばしているときのようだ。記念写真を撮り、ビデオを回して

       早々に引き上げることにした。まずは、大朝日岳登頂記念の祝杯が待っている。


 10:55 中岳―西朝日岳―竜門山散策

       若より提案あり、「折角来たのだから中岳、西朝日岳まで行ってきましょう」という。

       飲み飽きてきたところなので残りの3人のうち2名は同調したが殿は残るという。「皆

       で来た山なのだから4人で行こうヨ!」と説得工作が功を奏して、1人シブシブながら

       も出かけることにした。雪上を歩くと気分爽快で今までの疲れが吹き飛んでしまっ

       た。ルンルンして写真を撮り、ビデオを回して前進する。難なく中岳を通過し、西朝

       日岳の登り口で殿はここで待つという。仕方なく3人で西朝日岳への登りにかかり、

       途中でその先の竜門山まで行くという若にビデオを持たせて先行させた。爺と上様

       の2名はゆっくりゆっくりと西朝日岳山頂へ向かい、頂上を極めた。既に先行した若

       の姿は見えない。縦走コースには竜門山宿泊というパーテーもいた。山小屋への帰

       りにもいくつかのパーテーが竜門山方面へ歩を進めていた。


       2人が山小屋へ戻ったらケルンに寄りかかって眠っている登山者がいるではない

       か。ムムムム、ム・・・・、殿ではないか!上様が殿を起こして事情を問いただすと、

       散策に持参した焼酎を全部飲んでしまったので帰って来た。そしてここで眠ってしま

       ったという。もっとも、この後も夕食の準備をしながら祝宴の続きをして若の帰りを

       待った。何時に寝たかは定かではない。



■5月5日

 03:00 起床、炊飯、朝食

 04:40 ご来光(山小屋前)

       まだ明けきらぬうちから朝日を拝もうと宿泊者が山小屋の外に出てきている。我々

       もカメラやビデオをぶら下げてご来光を待った。最高の日の出ではなかったが、わ

       ずかに山々がモルゲンロートに輝く様子を見ることができた。





 05:00 大朝日岳山頂避難小屋出発

       残った飲料水で歯を磨き、顔を洗い、いよいよ今日は最終日の下山開始である。昨

       日登ってきた登山道と雪原を軽快に下っていく。例の雪田(急坂)ではビデオを回し

       ながら下山するが、下部のところでは雪が凍っており、滑り落ちそうであった。熊越

       の鞍部からは急な登り一辺倒である。苦しい登りが終わると雪の付着していない尾

       根に出て、小朝日岳山頂に至る。


 06:40 小朝日岳山頂(通過)


 07:20 古寺山山頂(通過)

       この辺りにドームテントが張ってあったところだ。尾根の東側には大きく発達した雪

       庇がどっかりと載っている。巨大な雪庇の間を抜けていくところもある。この先、登

       山道(夏道)は途中で右に折れる。前回の平成16年にも危うく真っ直ぐ進みそうに

       なったところである。若に持たせた地図を見ながら雪庇から急な斜面を下る踏跡が

       あった。ここから直角に折れて下るのだ。そういえば、赤い三角布がついた篠岳

       が刺してあった。


       この先で解かりにくいのが、ハナヌキ峰の日暮沢と古寺の分岐の箇所である。気を

       つけながら進み、夏道が数メートル出ているところに分岐道標を見つけた。間違い

       ない。これからもどんどん下っていく。沢音が聞こえ、赤い屋根が見えたら小寺鉱泉

       である。


 09:30 古寺鉱泉到着

       古寺鉱泉は3日前にはまだ雪囲いのままであったが、今日は雪囲いが外されてい

       た。鉱泉前の沢にはフキノトウが芽を出し、周囲の残雪とは裏腹に春が訪れてい

       た。下山途中も木々の芽吹きから少し緑に色づいた模様が進む春を見て取れる。

       タムシバの林も多く、我々の眼を楽しませてくれた。



<感 想>

       梁山泊倶楽部の活動も年々様変わりしているが、昨年と今年は新たなメンバーが

       加わり、少し冒険が出来始めた。新たな山への挑戦がこれからも可能なことを祈

       る。

       HPご覧の皆さまも、是非、雪の山へもお出かけください。とくに5月の連休頃からの

       東北地方の山には、まだまだ残雪も豊富ですし、雪が締まって歩きやすいことこの

       上なしです。ただし、この時期でも吹雪に見舞われることもあるし、読図力と判断力

       を兼ね備えたメンバーで入山願います。もし、可能ならわれわれ梁山泊倶楽部のメ

       ンバーと一緒にたのしみませんか。


以上


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