「白山」山行記録

期間:平成21年8月21日~23日



渡辺(記)

             白山(御前峰・剣ヶ峰・大汝峰)
 永年の念願が叶って白山へ出かけることができた。上信越道から北陸道、そして東海北陸道を経て国道156線平瀬温泉から大白川登山口へ着いたのは、22日午前4時前である。仮眠ののち午前7時に勇躍出発する。標高1200㍍前後のスタートである。辺りはブナ林の瑞々しい緑が疲れた目を癒してくれる。登山道はよく手入れされていて歩きやすい。1時間ほど歩くと、ブナの大木の樹海となる。その木々の合間からエメラレルグリーンの白水湖が眼下に望める。登山道の周りはオオカメノキが早くも赤い実をつけている。高度計を持っていないので高さがよく分からなかったが、ブナ林が消えたと思うと、ダケカンバとナナカマドの林に変わってくる。それは見事なまでの変わり様である。

 森林の垂直分布といわれるもので、白山では1600メートルまでの山地帯(ブナ帯)、2350メートルまでの亜高山帯(ダケカンバ帯)、それ以上の高山帯(ハイマツ林)と植生がはっきりしていると言われ、その分布帯を体験することになる。
 登り始めて2時間もすると、右手に三方崩山の荒々しい光景が否応なしに目に入ってくる。午前10時、大倉避難小屋に着く。大倉山のピークは2038メートルである。辺りはダケカンバ林とナナカマドで山が黒々としている。道々にはシモツケソウの淡いピンク、ハクサンフウロの妖艶な紫、トリカブトノの蒼、黄色が際立つアキノキリンソウ、なよなよしいタカネナデシコ、虎のしっぽそっくりなトラノオ、大きな笠を広げたようなシシウド、エーデルワイスに似たハハコグサなど、その他数知れない高山の花々が咲き揃っている。

 避難小屋を出て1時間ほど高度を上げると、2つのコブが前方に現れてくる。それは御前峰と剣ヶ峰である。カンクラ雪渓を見やりながら高度をあげると、左に白水湖を見下ろす痩せ尾根に出る。そこのガレ場にマツムシソウやシモツケソウが群生している。
 白山は高山植物の宝庫と言われ、白山という名の付く花は30数種に上る。雪解け時のハクサンコザクラやクロユリが特に有名であるが、ハクサンフウロに出会えたのは救いである。
 小屋を出て2時間、ナナカマドのトンネルを抜けると視界が開け、右手から御前峰の裾野が広がり一面のハイマツ林になる。高山帯に入る。ハイマツ林を進むと、小さな水たまりに出会う。さらに雪渓から流れる小川?を横切ると、前方に赤い大きな建物が見える。

 今晩の宿である室堂小屋である。
 午後1時、予定とおりに室堂に到着する。快晴微風。抜けるような夏空が広がり、白山奥宮が鎮座し、御前峰に向かって遥拝道が天に上っている。水分の抜けた体にまずはビールで補給する。しとしきり昼食を兼ねた宴会をする。山の天気はどうなるか分からないので、最高峰である御前峰(2702.2メートル)へ行くことにする。アルコールの入った体での登りはきつかったが、その甲斐ありで360度の展望に満足である。

 23日午前3時40分起床、5時20分の御来光に間に合わせるべく、御前峰に向かう。遥拝道はすでに大勢の登山客で賑わい、ヘッドランプの光が暗闇に浮かぶ光景は幻想的である。8月とはいえ、ちょっと風が吹くと気温は急激に下がり寒い。防寒具、長袖の重ね着、手袋をしていい塩梅である。御前峰には白山比咩(しろやまひめ)神社奥宮が祭られている。

 展望は、真下に草木のない荒々しい剣ヶ峰(2660メートル)、やや離れて大汝峰(2684メートル)が聳え、遠望は、真東に堂々たる御岳の山容が黒々横たわり、左に乗鞍、さらに穂高4峰、槍の穂先、立山、剣、白馬の山々、南にターンすると、恵那山の三角錐、荒川三山、北岳、八ヶ岳、富士山など日本の3000メートル級の山々が俯瞰できる素晴らしい景色である。

 5時20分、穂高と槍の穂先の間から御来光がダイヤモンドのように輝いて昇ってくる。

 光彩が雲海に反射すると辺りがピンクに染まり、その見事さと荘厳さは言葉や文字では十分に言い表すことは難しい。遥拝道の周りはイワキキョウが今を盛りに咲き揃っている。

 クロユリは堅い実を付けている。

 午前7時、室堂を後にする。昨日雪渓から流れていた小川?は雪渓が凍って流れがなく涸川?になっている。雲が多く風が強い室堂であったが、登山道に入ると風も雲も気にならず、降らず照らずの格好の登山日和である。来た道を帰るだけだから特筆することもないが、下りには下りの視界がある。来る時に見落とした花々、人を怖れぬイワヒバリとの出会いなどを楽しみながら午前10時に登山口に戻る。



 2日間の疲れを大白川露天風呂で癒す。エメラルドグリーンの湖面を眺めながらの露天風呂は山に入ったものだけが楽しめる特権である。湯花たつ硫黄泉にたっぷり浸かり帰路の英気を養う。午後0時、帰路に発つ。白川郷の合掌集落を楽しみ、家路に着く。



                              
2009.8.21-23 宮本氏、土屋氏同行



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