残雪の乗鞍岳(3026m)
期間:2010年6月12日~13日 |
水戸を午後9時50分に出発して、乗鞍スカイライン三本滝駐車場に着いたのは、午前3時ごろ
である。車の中で仮眠をして6時ごろカップヌードルとモチ、バナナの朝食をとる。
雲ひとつない快晴である。紺碧の空に二条の飛行機雲がまっすぐに天に上るように浮かんでい
る。沈殿していた冷気を揺するようにカッコーが賑やかに鳴きわたり、乗鞍の山腹が朝日をうけ
て輝いている。乗鞍高原の一日の始まりである。
午前8時20分のシャトルバスで肩の小屋口まで上がる(バス賃1200円)。この時期はここまでし
かバスは通じていない。快晴であるが標高も2800㍍近くになると合羽を羽織るようだ。大雪渓の
入口近くに雪を掘って要らない荷物をデポする。剣ヶ峰から広がる大雪渓に圧倒される。
午前9時25分剣ヶ峰を目指し大雪渓を出発する。雪はザクザクであるが締った感じでアイゼン
を付けなくても大丈夫である。高度を上げて行くと、時々足をとられて危険な場面もあったが、
剣ヶ峰や朝日岳から広がる雪渓はさすがに大雪渓である。大雪渓では多くのスキーヤーたちが
滑降している。スキーヤーのなかには三本滝駐車場からマウンテンバイクでここまで登り、さら
に雪渓を上るという兵もいる。
午前10時55分 大雪渓の馬の背に出る。そこは蚕王岳(2980㍍)である。左手に天空に突き
出したように剣が峰のピークが鎮座している。来た道を振り返ると朝日岳が前方に見え、その
先に摩利支天岳とコロナ観測所が展望でき、さらに富士見岳や大黒岳が点在している。大休止
をして、アイゼンをつけ剣が峰を目指す。
午前11時35分 溶岩が積みあがった剣ヶ峰(3026㍍)に到着する。360度の眺望は至福の一
時である。東面には穂高、槍、常念などの北アルプスの山々が、北面は後立山の名峰がそし
て、西には秀麗な山容をみせる木曾の御岳が威風堂々たる構えを見せてくれる。
生憎、雲がかかり白山はみえなかった。眼前に3014㍍の大日岳と外輪がひらけ、コバルトブル
ーの小さな火口湖が残雪に浮かんでみえる。
乗鞍岳は、北アルプスの南端に位置し、剣ヶ峰を主峰に23の峰と7つの湖と8つの平原があ
る。その格好が馬の鞍に似ていることから「乗鞍」と呼ばれるようになった(ガイドブックから)。
乗鞍はだっだぴろい山との印象があり、加えて乗り物で山頂近くまで行けることから高山だとい
う意識が余りしない。同行者の井原さんや吉田さんも訪れているというが、一様に同じ印象であ
る。山屋の会長は、物足りなさに敬遠していたようだ。
私が、初めて乗鞍を訪れたのは昭和42,3年ごろと記憶している。高山からタクシーで畳平ま
で上り、ここからバスで松本へ下りたのであるが、川奈渡ダムを建設中で工事用の発破のため
時間調整をうけた覚えがある。
正午、山頂を下りる。大雪渓の下界は残雪とハイマツの緑、ダケカンバの緑と白、様々な色
が浮かび絵画的光景である。急斜面をおっかなびっくりトラバースしながら午後12時45分デポし
た大雪渓の入口に戻る。夏場、肩の小屋口から登った人の記録を見ると、一時間ほどである。
今回は休憩を入れて2時間ほどであるから会長が軽んじていた気持ちも分るような気がした。
しかし、山は立体的であるから季節、天候、体調等によって趣きが違ってくる。今回は雲ひとつ
ない快晴に恵まれたうえ残雪を踏むというこの時期ならではの楽しみができた。
午後1時5分 肩の小屋口トイレを出発。位ヶ原山荘までの帰路である。ダケカンバとハイマツ
林の中残雪を踏みしめ下る。ひたすら雪渓を下ると、赤い屋根の位ヶ原山荘が見えてくる。
午後1時45分小屋に到着する。標高2535㍍の高地である。この小屋は登山者用に70年前に開
業したそうで、建物は30年前に建て替えたという。エコーラインが出来てからは登山者の利用頻
度も落ちているようだが、清潔で部屋も広く気持ちよかった。今回は素泊まり4500円である。
4時から炊事ができるということであったが、何時もの悪いところ時間が待ちきれなく部屋で酒盛
りが始まった。まだ3時前だと言うに。村越さんが秋田の大吟醸を差し入れた。極上の薫り高い
酒で喉を湿すと、あとは何を飲んでも同じでウイスキー、焼酎、ビール等何でも御ざれである。
井原さんは青春時代を山屋であけ暮していたためか、「あれから○○年」というフレーズが度々出
てくる。この乗鞍も「あれから30年」だそうで、その口調にみんな大笑いである。夕食は、タマネ
ギ+じゃこ+キヌサヤのサラダ、野菜たっぷりの鶏肉鍋締めはうどんの豪華版である。午後6
時半前後暴飲暴食と疲れに誘われて就寝する。
6月13日 午前5時起床。朝食はサバ缶、昨夜の鍋の残りにうどん。外は昨日と打って変わっ
てどんよりとしたダーク調。
午前7時山荘をヒガラの「ツーピーツー」という鳴声に送られて出発する。ダケカンバと針葉樹
の林の中残雪を踏みしめて下る。エコーラインを3度ほどショートカットすると、
冷泉小屋に出る。さらに2度ショートカットすると、シラビソの林に入る。右手に沢の流れを聞き
ながら雪が消えた尾根道を歩く。ここで乗鞍初めての高山植物であるショージョーバカマに出会
う。30分ほどで32号カーブの標識に出た。午前8時10分である。
34号カーブ手前に三本滝に向かう道標があったが、分岐が分りづらいのでここからエコーライ
ンを歩くことにした。オオカメノキや色鮮やかなミツバツツジ、幾く筋の滝を眺めながら下ると、
リフトの橋脚に出た。眼下に三本滝の駐車場が見えた。ゲレンデを下り午前9時15分帰還す
る。
私と井原さん、村越さんで900㍍離れた三本滝に向かう。乗鞍岳から流れ出た沢の終着点で
三本の滝が一箇所に集まっている。袋田の滝のようなもの(右)、一気呵成に落下する(中)、
優雅に落ちる(左)、とそれぞれ趣きが違う滝で一見の価値ありである。山岳信仰の修験者の
行場であり、周りのシラビソやカエデ、ダケカンバなどが滝を引き立たせている。
湯けむり館で汗を流し、軽い昼食を取り家路に着く。
2010.6.11(夜行)12(登山・泊り)13(下山・帰宅)
宮本、井原、村越(智)、吉田各氏同行
|
|