日本百名山 大台ヶ原・弥山八経ヶ岳 山行報告

期間:2011年6月4日(土)~5日(日)



報告:渡辺

 伊丹空港から遠路3時間余のドライブで吉野熊野国立公園である大台ケ原に昼過ぎに着く。大台ケ原ビジターセンターは1570メートルである。大台ケ原ドライブウエィは昭和36年7月7日に開通した。大台ケ原は本州で雨の最も多いところで年間降雨量は4800mmもある。広大で平坦な高原状の山である。トウヒ林やブナ林などの森林生態系が残り、地衣類や苔が生え鬱蒼とした森林である。トウヒ群落の「東大台」とウラジロモミーブナの「西大台」と森林体系が分かれている。

 大台ケ原入口    駐車場付近

大台ケ原の主峰日出岳 (1694.9メートル)を目指し午後1時10分にビジターセンター前を出る。周遊路に出ると展望はひらけ笹の原を30分ほど行くと石楠花林が現れ、展望台に出る。視界の先は尾鷲 湾や熊野灘が見えるというが、もくもくと雲がわき見る事ができない。

 展望台    案内図

午後1時40分日出ヶ岳の山頂に着く。お椀を伏せた駄々広い山頂で吾妻石楠花が咲いている。東方に尾鷲湾、熊野灘、西方に大峰山脈が眺められるが、今日は生憎ガスがかかっている。帰りは正木峠に向かう。五葉ツツジの群生でそれも大木である。シロツツジともいい、木肌が松に似ていることから松肌ともいう。そのつつじのトンネルを進むと、トウヒが白骨のように立ち枯れ林立している。背筋が凍るようなその光景は、古代を思わせる。

 日出ヶ岳山頂    トウヒの立ち枯れ

 正木峠を正木ヶ原に下ると、トウヒの立ち枯れは 更にひどい。原因はいろいろあるようだが伊勢湾台風の塩害と強風による根起し、鹿の食害が大きな原因といわれている。ここの鹿は有害駆除をされているので人前になかなか姿を見せないそうだ。正木とはトウヒがまっすぐ伸びることから転じている。トウヒとツガの林を下ると、尾鷲辻の分岐に出る。笹原やカエデの林を抜けるとビジターセンターに戻る。このコースは東コース7キロの3分の1程度である。大台ケ原全部を歩くためには2日を要する。
 大台ケ原を後にして、天川(てんかわ)村に向かう。天川村は紀伊半島中央部に位置し、面積の4分の1が吉野熊野国立公園に属し、近畿最高峰(八経ヶ岳)を擁する最源流の村である。△ムスビを立て たような急峻な山々が重なり合い、V字型渓谷の谷底の狭い明地に国道309号線がへつるように走っている。車は長さ9メートル高さ3メー トルまでの制限があり、我々の15人乗りのマイクロバスが限度ぎりぎりである。すれ違いはもちろんできず、途中で出くわした時にはどちらかが譲り合うしかない。ドライバーが張り出した崖に○○センチしか余裕がな いとか言いながら、慎重に運転し大台ケ原から2時間半かかって天川村の旅館 「まえひら」に着いた。天川村は人口1800人、 小学校は1つ。生徒は56人という。昔は林業で栄えたが今は仕事がなく、若 い人は村を出る。典型的な限界集落である。

       「まえひら」は明治16年の開業
山菜、アマゴなど地のものをふんだんに使った料理
吉野の檜や杉を使った建屋は趣がある。旅館はここ だけなので有名人も利用している。最近では中山エミリーが泊まった。


世界遺産大峰山奥駆 八経ヶ岳
 6月5日 午前5時15分宿を出る。昨日来た国道309号線を戻る。早朝といえど日曜日天気も上々なので、川迫川渓谷に入る釣り人の車が我々を追い越して行く。行者還トンネル登山口に6時に着く。ここの標高1100メートル。トンネルの出口脇の登山口を15分に出る。川筋に沿って5分ばかり平坦な登山路を進み、木製の短いつり橋を 渡ると登りが始まった。奥駆道出会い1500メートルまで400メートル上がる急坂の始まりである。木の根を踏み、石灰石がごろごろする急坂を登る。コナラやカシ、石楠花の林が続く。赤い石楠花が咲き、真っ赤な山つつじが1本あった。

 木の根坂    見事な山つつじ

日本に渡る夏鳥に郭公、ほととぎす、ジュウジ、ツツドリがいる。郭公やホトトギスは家の周りでも聞くが、今日はじめて「ジュウジ」の鳴声を聞いた。「十時」と鳴くことからその名がついたという。本当に「十時」と聞こえる。藪鳥のミソサザエやコマドリの美声を聞きながら奥駆道出会に7時20分に着く。あたりはシロヤシオツツジの群生で清楚 な白い花がトンネルになって咲いている。
 7時30分出会を発つ。シロツツジの林がいつしかカエデの林に変わり、標高1600メートル弁天の森に7時55分着く。青葉が目に清かである。

 出会での休憩    白ヤシオツツジ

出会からは稜線を歩く。開けたところから弥(み)山(せん)小屋がはるかに見える。弥(み)山(せん)と は高いところの真ん中と言う。緩やかなアップダウンを繰り返して聖宝の宿跡(理源大師像)に8時30分 に着く。

 弥山小屋を望む    理源大師像

ここから約350メートル上がると弥山に出る。8時37分発つ。バイケイソウの群生のなか高度をあげる。 カエデの林から白い花をつけたオオカメノキが出始まる。地にはミヤマカタバミやカニコウモリ、ワチガイソウ、セントウソウなどの高山植物が花をつけている。弥山小屋下の急坂は木の階段が疲れた体を鞭打つ。9時37分1時間かかって弥山小屋に着く。ツガやモミの黒々と した林が広がっているが、弥山に通じる天河弁財天奥社の回りはシラビソの立ち枯れが林立して異様な光景を見せる。

 弥山下からの小屋    弥山

名残りの桜チシマザクラが咲いている。弥山に芸能 の神様 天河弁財天奥社が鎮座している。二つの鳥居をくぐると護摩壇を前に奥社がある。ここが弥山の頂き1895メートルである。

 奥社鳥居    奥社

小屋を10時に発ち、八経ヶ岳に向かう。シラビソの林を少し下ると、視界がぱっと広がる。視線の先は驚くばかりの光景である。シラビソの立ち枯れが息を呑む光景である。

 息を呑む    サンカヨウ

八経ヶ岳の中腹はオオヤマレンゲの群生が見られ る。鹿の食害で数を減らしている。食害から保護のためフェンスで囲まれている。6月末から7月初めが見ごろとのこと。ツツジというが木蓮の一 種だそうだ。修験の山に咲くから「蓮華」と名付けられた。10時30分頂上に着く。1914.9メートル。余り広くない頂上部である。大峰山塊が 望まれるはずであったが雲が湧いてきた。修験の山らしく先達の納札がたくさんあった。郭公が鳴き渡り、ツツドリのポッポボッポという独特の鳴声に興味をそそられた。

 レンゲの蕾    頂上

午後2時10分 行者還トンネル登山口に戻る。途中ばらばらと雨に打たれ合羽を着たがつかの間のことであった。標高差785メートル前後、所要時間8時間、厳しい山行であるが、移り変わる森林限界や 石楠花、シロヤシオツツジ、オオカメノキ、山ツツジ、サラサドウダン、コヨウラクツツジなどの花々が目を楽しませてくれた。1泊2日の行程で大台ケ原と八経ヶ岳の百名山2座を踏ん だ。関東地方からこの百名山に入るにはアクセスが悪く、なかなか足が向かなかったが、運よくツアーがあった。男5人女6人のパーティであつた。ビギナーの女性、百名山を 目指すもの、妻に誘われた旦那さん、甲武信ヶ岳から帰ったばかりの女性などみんな元気であった。御所の温泉「つきかもの湯」で汗を流し、伊丹空港 で鯖寿司と生ビールで夕食、午後8時15分発の飛行機で羽田に戻る。途中雷雲で揺ら れたり遅れたりしたため常磐線最終に間に合うか気が気でなかったが何とか間に合い、6日午前1時過ぎ自宅に帰った。

   八経ヶ岳    行者還登山口
 夕食    オオカメノキ

2011年6月4日~5日 クラブツーリズム 添乗員井口 同行佐藤隆さん
4日午前3時33分勝田駅西口電鉄羽田行き 帰り上野午後11時勝田0時30分





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