雌阿寒岳・十勝岳・羊蹄山 山行記
~大空と大地の旅2012~
期間:2012年8月25日(土)~9月2日(日) |
昨年の「大空と大地の旅」に感動して、今年も晴優会主催の三座山行の旅に参加した。今年のテーマは、「秘湯と天空を訪ねて」である。道内八湯のうち五湯を楽しみ、三座を制覇する組み合わせである。
8月25日、新潟からフェリーで小樽へ。日本海は油を流したようなベタ凪、静かな航海である。午後6時23分青森県へなし崎沖で真っ赤な太陽が西に沈むと、中天には初秋の下弦の月が航跡をゆらゆらと照らし、時には満艦飾のフェリーと行き交うなど18時間の船旅を愉しんで午前4時半に小樽に着く。
_ へなし崎沖の落日 |
_ 中天にかかる下弦の月 |
夜明けを待つ小樽港 |
今回も観光組と登山組とに分かれている。32名の参加者であるが、それぞれ半分くらいの割合である。私は、登山組なので記録は山中心になる。
8月26日、北海道初日は雌阿寒岳である。観光組は釧路湿原を探索する。
1.雌阿寒岳
オンネトー登山口からの入山である。ガイドは昨年羅臼岳でお世話になった滝澤さん。標高658㍍からの登りだしである。
オンネトー登山口 |
トドマツの林を10分ほど行くと、1合目である。木の根踏みの登山道でやや歩きづらい。10時46分赤エゾマツの開けた林2合目。針葉樹の原生林ではあるが開けているので風通しは良いはずであるが、風がなく蒸し暑い。この辺りから急な上りになり11時15分3合目。ゴゼンタチバナの赤い実やカニハコウモリの白い花を見かける。ハイマツの森林限界を過ぎると、右手に阿寒富士が見える。九十九折の登山道が火山礫のなか白く浮かんで見える。12時30分6合目。振り返ると神秘の湖オンネトーが見え隠れする。ここから先の登山道はズルズル滑るガレ場が頂上まで続く。名残りのメアカンフスマやコケモモ、メアカンキンバイが疲れた心身を癒してくれる。頂上に近づくに連れて登山道は外輪をめぐるようになり、噴気を出している爆裂火口を覗きながら13時30分1499㍍の頂上に到着する。3時間での登頂である。解説書では距離が長い割に傾斜がなだらかと書いてあるが、結構きついところもあった。火口には青く染まる青沼や赤く浮かぶ赤沼がある。風が強くなったので10分早々でトップを退散する。帰りは、雌阿寒温泉コースである。眼下にはナカマチネシリ火口原が広がり、はるかかなたに阿寒の湖が見え、雲間に雄阿寒岳が姿を見せた。
_ 7合目上の急登 _ |
_ 雲間の阿寒富士_ |
雌阿寒岳頂上 |
下りは、急斜面で足元が悪い。しかし到着点の野中温泉別館の赤い屋根が見えるから気分的には楽である。14時20分6合目。ここからはハイマツやナナカマドの樹林帯に入る。ホシガラスが餌場に食べた松ぼっくりの芯を並べていた。赤エゾマツの原生林を暫く下ると標高700㍍の登山口である。15時40分到着する。下り2時間都合5時間標高差7百㍍の雌阿寒岳登頂である。
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頂上下の大岩 赤沼が望める |
_ ナカマチネシリ火口原 |
_ 雌阿寒温泉登山口 |
ノロッコ号での釧路湿原を堪能した観光組と合流し今宵の宿「芽登温泉」に向かう。芽登温泉では、シマフクロウの雛の鳴声を聞くことができ大満足である。
8月27日、芽登温泉を出て然別湖、ナイタイ高原牧場、十勝牧場の白樺並木など十勝平野のドテカサを体験し、帯広では豚丼を満喫して登山組は十勝岳温泉へ観光組は旭岳温泉に分宿する。
2.十勝岳 8月28日 ガイド中川・アラタさん
午前4時30分起床、気温14度ひんやりとした朝である。凌雲閣から眺める富良野の空に雲海が浮かび、街の明かりが投影機のようだ。 午前5時30分登山口をスタートする。標高1280㍍、五葉松の開けた砂利道を40分ほど歩くと安政火口の大きな口が迫ってくる。
_ 十勝岳凌雲閣から雲海 |
_ 安政火口が迫る登りだし |
_ 上ホロ分岐 |
ここからやや登りが急になってハイマツの低木をくぐりながら6時40分上ホロ分岐にでる。シラネニンジン、オヤマリンドウ、ウメバチソウをチラホラ見かける。安政火口には八つ手岩、夫婦岩、化け物岩などの奇岩がありガイドがそれぞれ説明してくれる。300階段などの急な登りを重ね50分ほどで上富良野岳の尾根筋にでる。ハイマツが火山礫の地に緑を添えている。ときにナキウサギの鳴声が聞こえる。上富良野岳の尾根は安政火口の外輪となり、上ホロカメットク山の肩越しに十勝岳のテッペンが見えるようになる。7時40分1893㍍の上富良野岳に到着する。360度の展望、安政火口から下ホロカメットク山までの景観に満足である。
_ 300階段上の稜線から |
_ 上富良野岳頂上 |
上ホロカメットク山 熊がいる |
出掛けに凌雲閣の主人が上ホロ避難小屋の近くに熊が出没しているので気をつけるようにとの忠告を受けた。上ホロカメットク山を過ぎて下りにかかると、右手の草原にうごめく黒い影を発見する。クマだ。距離にして数百メートル、笛を吹いたり、大声を出したり、暫く様子をみたが、食事に夢中のようで我々には興味を示さなかったので静に前進にて8時35分上ホロ避難小屋に入る。残飯に味をしめて居つきクマになっているという。50分ほどで大砲岩を通過する。常に十勝岳の頂上が視界に入り、ナナカマドやハイマツの低木林を進むと一面が溶岩原になり、頂上下の急登に差し掛かる。大雪山系でしか繁殖が確認されていないギンザンマシコをウオッチングしながら、ズルズル坂道を詰めると頂上である。9時52分2077㍍のテッペンである。4時間30分の登山である。快晴、ほどよい微風が火照った体を癒す。展望はバッチシである。北海道の背骨の真ん中あたりに立っている。頂上の道標を正面に左手が上ってきた十勝コース緑が多い。美瑛岳を望む右手は荒涼たる荒野で左右対称が異なる景色に驚く。頂上部は結構広い。夏雲が沸き美瑛岳や美瑛富士がときには隠れたりする。
_ 十勝岳頂上 |
美瑛岳を望む |
10時25分頂上を下りる。外輪を20分ほど歩くとごつごつした岩が現れる。30分ほど岩を乗り越え跳ね超え急坂を下ると、ややゆるやかな火山礫の道に変わる。回りの光景は異様な感じになる。ガイドの説明によると十勝の泥流跡は火星の表面に似ているという。幾重にも重なった泥流は雨や雪に流されて分厚い層を見せている。その光景を楽しみ幾度か急斜面、緩斜面を繰り返し右手にグランド噴火口を右手に昭和火口を見ながら12時35分十勝岳避難小屋に着く。ここまで2時間の下りである。火山礫の大地には夏の晩花エゾオヤマリンドウが一面に紫の花をつけている。この花が咲くと北海道の山は秋のシーズンになる。ほかにはシラタマの木が白い花をびっしりつけている。ダテは紅葉を始めている。13時45分方向930㍍の望岳台に着く。ここからの十勝岳は全容を見せてくれる。大正火口からはもくもくと噴煙が上がり火山の息吹を感じる。下り3時間都合7時間30分標高差1150㍍の十勝岳登山である。望岳台からはホテルのバスで十勝白金温泉に行き、今夜の泊りとなる。
十勝白金温泉からの十勝岳全容 |
観光組は、旭岳ロープウェーで大雪山の片隅を探訪し、富良野、美瑛の丘を見物して支笏湖の近くの秘湯丸駒温泉泊りである。
8月29日 この日は登山組、観光組それぞれ別行動である。登山組は山を登らず、苫小牧―昭和新山・有珠山―洞爺湖温泉。観光組は、小樽見物―積丹半島見学―洞爺湖温泉、ここで同宿になる。
3.羊蹄山
8月30日洞爺湖のホテルを午前5時に出発、真狩コースへ向かい、登山口のキャンプ場に6時前に着く。ガイドは伊藤さんと佐藤さん地元のスキーのインストラクターをしている。標高320mからのスタートである。キャンプ場を6時に出発する。
_ 真狩コース 登山口 |
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コブ分岐付近のダケカンバの林 |
4合目付近のダケカンバの大木 |
台風15号の低気圧崩れの影響なのか生暖かい空気が流れ蒸し暑い。針葉樹の原生林を木の根ふみながら45分登るとコブ展望台分岐になる。このあたりからダケカンバの林に変わる。6時55分2合目。7時過ぎになんとも形容しがたい2合目半を通過する。右手が開け真狩の田畑がみえる。ここら辺から急な登りが繰り返し始まり、羊蹄山登山の試練を受け始めた。7時20分3合目ミヤマハハコクサ、ヒヨドリソウが目に付く。7時50分4合目、ナナカマドの林に変わり所々にダケカンバの大木が存在感を示している。8時25分5合目登りが切り返しになって真狩の平野が広く視野に入ってくる。9時5分6合目、カエデの林になり更に傾斜がきつくなる。7合目あたりから山腹を巻くように登り、10時5分8合目洞爺湖の湖面が見える。10時35分9合目、山頂や避難小屋が見えるようになる。またニセコスキー場もみえる。ここから15分ばかりハイマツの林の中を登り11時5分、釜の淵に出る。羊蹄山は休火山であるが太古の噴火の跡は、まさにすり鉢をすっぽり埋めた形である。外輪は真狩コース側が岩峰、倶知安コース側は砂礫とはっきりしている。外輪を左回りに頂稜部に向かう。少しばかりハイマツの低木林を進むとゴツゴツした岩が出てくる。乗り越え跳ね越え50分かかって頂上に11時55分到着する。標高1898メートルの高みである。約6時間の登頂。
_ 9合目付近から稜線を望む |
_ 外輪の肩から頂上方面を |
頂上にたつ |
見事なまでのすり鉢型の山頂ですり鉢の底は、山頂部下が父釜、倶知安コースの途中にある北山下が母釜と呼ばれる。花の季節を過ぎているので多くの高山植物は見られないが、山頂部とその付近は「後方羊蹄山の高山植物帯」として天然記念物に指定されている。快晴、微風、360度の展望を愉しんで12時30分倶知安コースを辿ることにした。三角点は頂上よりやや離れたところにある。砂礫の歩きやすいなだらかな道を30分下ると、北山を過ぎ旧小屋跡に出る。振り返ると屏風を立てたような火口壁がきれいだ。15分ほど下ると1720㍍の9合目である。ここからは一気の下りとなる。ハイマツ、ナナカマド、カエデ等が現れ、ジグザクを切って急斜面を下りる。2時50分5合目まで下りた。
_ 三角点 |
_ 倶知安コースから頂上部 |
羊蹄山登山案内 |
4時過ぎに2合目、ここからは低山性広葉樹林の中を進み、風穴を覗き更に歩を進めると標高350㍍の半月湖野営場登山口に到着する。丁度5時である。所要時間4時間30分。登り6時間下り4時間30分計10時間30分の長丁場であった。傾斜のきつい下り道は只管くだるばかりで体にこたえたが、美しい円錐形の蝦夷富士を登頂した満足感の方が疲れを上回った。途中のミルク工房から見た後方羊蹄山は、名に恥じない秀麗な姿を見せてくれた。今宵の宿は、観光組と一緒にニセコ昆布温泉鯉川温泉旅館である。
ミルク工房からの羊蹄山 |
8月31日 鯉川温泉を出てニセコ高原の神仙沼を探訪し、岩内(日本海)に出て長万部から内浦湾を函館方面に向かう。後方に羊蹄山を見送り前方に駒ヶ岳を向かえるロケーションをバスの中から楽しみ、夕刻、上ノ湯温泉銀婚の湯に着く。広大な敷地に5箇所の貸切り風呂がある秘湯の宿である。
9月1日 函館市場を中心に土産ショッピングタイムを楽しんで、12時4分発特急白鳥で青函トンネルをくぐり青森駅に。バスはフェリーで来たが、風が強く接岸がうまくいかず少々時間がずれたのがおまけであった。一路新玉川温泉を目指す。
_ 東大雪 芽登温泉 |
_ 十勝温泉凌雲閣 |
十勝白金温泉 |
_ ニセコ昆布温泉鯉川温泉 |
_ 大湯の沼 |
ニセコ神仙沼 ミツガシワ |
_ 銀婚湯温泉由来 |
_ 庭園内 桂の並木 |
貸切り風呂のひとつ |
_ 青函連絡船名残り函館駅 |
_ 青函海底トンネル解説 |
青函海底駅通過 |
_ 新玉川温泉 |
新玉川温泉のダケカンバの大木 |
9月2日 8泊9日最終日、それぞれの思い出と感動を抱いて、たくさんのお土産をかかえて家路に向かった。少々長い旅とは思ったものの、始まってみればあっという間に時間が過ぎていった。船旅あり、鉄道あり、中々行けそうもない秘湯あり、三座あり、この企画をした日立電鉄晴優会スタッフならびに運行スタッフの皆様に感謝を申し上げます。見事な企画でした。来年も楽しみが出来ました。
費用 観光組138,000円
登山組153,000円
同行―民子・勝子
2012.9.6 |
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