父島(旭山・中央山)・母島(小笠原最高峰~乳房山)

期間:2012年4月2日(月)~6日(金)



報告:村越

*日程:2012年4月2日(月)~7日(土)・船内2泊 ・父島2泊・母島1泊

*費用:  1人当り 合計金額  ¥128,020-
【内訳】 ・荒川沖⇔浜松町(往復) ¥2,220  (渡邊さんと上野で合流)
・航送料(往復)おがさわら丸 ¥71,700 (特2等を利用)東京⇔父島
・航送料(往復)ははじま丸 ¥8,920 (燃料調整費含む)父島⇔母島
・宿泊代3泊 ¥21,000(民宿2、ペンション1)
・レンタカ-代 ¥6,230、父島・母島
・(1日借り)ガソリン代 ¥880
・南島上陸とホエ-ルウォッチング ¥7,200
・ナイトツア-\3,500
・おがさわら丸船内食事代 ¥6,430(朝×2 昼×2 夕×2)
・飲み物代、その他(酒類、つまみ、お弁当×2)¥4,000

*装備:  日帰り装備    

*参加者: 渡邊英裕、村越春夫、智子

・計画と実行
小笠原には必ず行きたいと前々から温めていた。東京都でありながら船でしか行けない遠い島だ。昨年の夏に【世界自然遺産】に登録された。『これは大変だ!』行ける時に行かなければ、と決心した。2月の末に(おがさわら丸~定員1036名)の乗船券は直ぐに取る事が出来た。インタ-ネットで宿泊先を調べると何処も満室ではないか!、慌てる。空きの有る民宿とペンションに申し込みの電話をしたが父島は4件目、母島は3件目でやっと予約が取れ父島と母島のレンタカ-の手続きも出来た。最後に父島の小笠原洋上クル-ジング&ダイビング&南島上陸の1日ツア-の予約もできた。【南島に上陸出来るのは1日に100人まで・上陸時間は2時間以内の規則が定められている。ガイドの同行も必須条件】希望の計画通りに何とか実行出来そうだ。

4月2日(月)(晴れ)江戸崎6:30-荒川沖7:11-浜松町8:30-竹芝客船タ-ミナル8:40=出港10:00

竹芝タ-ミナルは多くの人でいっぱいだ。公務員の異動と赴任、警察、学校の先生、壮行会が行われて、活気に満ちていた。今日の乗船客数は540人程で定員数の半分位だ。海も穏やかで静かな航海の約束を予感出来たが二見港まで凡そ26時間の長い船旅だ。
【父島】父島列島は南島、西島、東島、兄島でなっている。小笠原諸島最大の島で父島に約2,000人が暮らしている。山には世界的に貴重な固有種、海には美しい珊瑚や熱帯魚、一年中イルカが泳ぎクジラも子育てにやってくる多彩な魅力に溢れた南国の楽園。ザトウクジラの子育て、イルカの出合い。また「ナイトツア-」ではオガサワラオオコウモリ(固有種)グリ-ンぺぺ(発光するキノコ)オカヤドカリ、星座などの観察も期待したい。

4月3日(火)(晴れ気温22℃)父島、二見港11:40(着)【下船時靴裏消毒】-長崎展望台13:15-旭山14:00(往復40分)14:40-初寝浦展望台15:00-中央山15:40-三日月山展望台17:30-民宿(大洋荘)17:50(着)

二見港に到着後、レンタカ-に乗換える頃には13時近くになっていた。昼食を波止場通りの寿司店に立ち寄り名物の島寿司を戴いた。島魚のサワラを醤油や酒等で漬け込み、保存食としており洋カラシで戴く。さっぱりして清楚で美味しい。嘗て島にはワサビそのものが無かった名残とか。
(長崎展望台の絶景を楽しみ旭山に向かう)・旭山(262m) 山頂まで整備された遊歩道が続き歩きやすい。往復40分の道程だ。山頂まで展望は無い。タコノキ、ヤシノキ、マルハチ、シダなどの亞熱帯植物が生い茂り一人で歩くのは怖い!山頂から見下ろすと港に停泊している定期船のおがさわら丸の外洋航路を乗り切る逞しい船の姿に魅了される。 10分程、南に車を走らせる。
←初寝浦展望台から初寝浦の尾根に二頭の野山羊の姿を見つける。小笠原諸島固有の植物や昆虫、陸産貝類、鳥類を食害したり脅かしたりするので外来動物の駆除の対象に

なっているそうだ。展望台周囲には旧日本軍の送信所や発電所跡があり当時の凄まじい様子が目に浮かび、儚さが湧いてくる。中央山登山口には車で数分の到着。中央山(319m)(夜明道路)沿いの遊歩道から5分ほど登った所が山頂で360度の展望。展望台には海軍が設置した【電波探信儀の台座】が残っていた。戦争の悲しさが行先々に点在している。

山から海岸線に下りて南へ向かい小港海岸へ。折り返して島の北西に位置しいる。三日月山展望台に急ぐ。通称「ウエザ-ステ-ション」に水平線に沈む夕日を期待しながら30分程で到着した。人影は少なく5~6人程。気温も下がり海風が冷たい中、ザトウクジラの親子の観察も

双眼鏡から確認出来た。ラッキ-!、待つ事1時間、薄雲がかかってはいたが、沈む夕日にシャッタ-チャンス、感激! クジラの姿は波シブキで確認できる、驚き。満足して今日の宿泊先の大洋荘へ向かう。素朴な佇まいだが

アットホ-ムな雰囲気でホットする。宿に到着するなり『明日からの予定は?』と尋ねられた。質問の意味を聞くと「ガ~ン」と。唖然とした。5日の【ははじま丸の乗船券】の購入の件だった。話によると3月の春休みのシ-ズン中は、個人客は後回しで、キャンセル待ちでも乗れない人がいたらしい。今まで高まっていた気持が一気に萎えてしまった。相談の結果、明後日は「ははじま丸」乗船手続きの窓口が開く1時間前に並ぶ事にした。『母島には行けなくなるかも!』くよくよしない。明日の楽しい計画に神経を集中しょう。

4月4日(水)(雨後晴れ気温23℃)クル-ジングツア-の1日(南島上陸、ホエ-ルウォッチング、シュノ―ケリング) 雨は8時頃にあがった。歩いて5分程の波止場へ。水着とウェットス-ツを着用し初めての経験に少し緊張する。18名の参加者だ。ザトウクジラの親子に出逢う

がイルカは時期的に早くて逢えなかった。【海域公園】では一生一度とも言える海中散歩へ。足ひれとシュノ-ケルを装着、海中の魚達と泳ぐ。素晴らしい体験をした。別世界に感動する。船は南島に向かい14時、沖合に到着。荒れた沖合で乗船者をバランス良く配置し、狭い難所の浅瀬を船長は全速力で一気に湾に入る。緊張の瞬間だ。乗船者全員は船長に拍手!『南島上陸成功!』

_船より千尋岩(ハ-トロック)
【南島】父島の南西1キロ沖に浮かぶ南北1.5キロの島。石灰岩でできた「沈水カルスト地形」という世界でも珍しい成り立ちの小さな無人島だ。

太古のままの自然とまぶしい白い砂浜。その素晴らしさに息をのむ。扇池の波打ち際から続く砂丘には、沢山の巻貝の殻が散乱している。およそ1000~2000年前に絶滅した小笠原の固有種ヒロベソカタマイマイの半化石だ。残された1時間30分の時間を満喫して二見港に戻った。
16時40分、大洋荘に到着する。夕食後、19時から小笠原ガイドの愛称は『島ちゃん』に2時間のナイトツア-の案内をしてもらう予定になっている。中央山の道路の付近でエメラルドに光るキノコ(グリ-ンぺぺ)を見ることが出来るとの事。案内をしてもらう。『見られる条件として雨の降った後、気温が23℃以上であれば、』と教えてもらった。しかし、今夜の気温は20℃位で見る事は出来なかった。小港海岸ではオカヤドカリに出逢い、浜辺で星座の観察をした。花の密を吸いにくるという【天然記念物、オガサワラオオコウモリ】を探しに農園センタ-の道路沿いの森の中へ入る。《キキィ――イ》と鳴く。「いた!いた!」私達は喜ぶ。高いヤシの木の枝に2匹がぶら下がっているではないか。飛ぶ時は翼の巾は1m近くにもなりびっくりした。

4月5日(木)(晴れ、気温24℃)おにぎりをマスタ-に作ってもらい二見港へ。乗船待合室に6時30分に到着する。人影はまばら。5~6人の人が並んでいたが乗船手続きも無事に済みホットした。

二見港7:30【乗下船時靴裏消毒】-沖港9:40-(観光協会・登山手続き)-乳房山登山口10:40-爆弾跡11:10-ガジュマルの気根のトンネルを過ぎる-11:40(昼食)-乳房山、山頂12:15-大剣先見晴所14:10-下山14:40-観光協会15:30-御幸之浜16:00-東京都道最南端16:20-東港16:50-北港17:00-新夕日の丘17:20-ペンションドルフィンに到着 、宿泊)

【母島】は父島からさらに南へ約50㎞。南北に細長く山には亜熱帯の固有植物や高木林が茂る緑深い静かな島。人口460人。地球上で母島にしかいない【天然記念物】ハハジマメグロや絶滅が危惧されているアカガシラカラスバト通称(アカポッポ)の出逢いに期待する。
【ははじま丸】は父島(二見港)と母島(沖港)間を1日1往復。定員人数143名。片道2時間10分の航海だ。沖港に定時の9時40分に到着した。客船待合所内に隣接している観光協会で乳房山登頂記念証の申し込みの手続きをして車で登山口へ向かった。乳房山(ちぶさやま463m)登山口には靴の消毒用

マットやプラナリアを駆除する為の酢のスプレ-、はけ等の入ったボックスが設置されていた。
登り出すと移入植物のサンセベリア(トラノオ)が両脇にびっしり。腕に触るとチクチクする。『いったい何!これが登山道?まるでジャングル』恐る恐る足を踏み入れる。《父島、母島にはヘビは生息してないと聞いているので安心している》米空軍が落した500㌔爆弾跡の大きなくぼみにマルハチが高くそびえ立つ。オガサワラビロウ、タコノキ、ムニンヒメツバキ、コブノキ、タニワタリなどの【固有種】が見られた。

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トックリラン(登山道の一部)

タコノキ

ここを過ぎて少し行くと巨大ガジュマルのトンネルを通過。山頂直前までは急な登りが続く。梯子を登った所で休憩。山頂はもう少しだ。気温は25℃を越えているのでは?暑い!山頂まで約1時間の行程だ。狭いがデッキが作られた山頂で展望を楽しみ下山へ。下って行くとハハジマノボタン(6月下旬~8月の中旬)ワダノキ(10月中旬~12月中旬)の固有種の根元の脇で休憩する。鳥の鳴き声の方向

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植生と違い見晴が良く本土の
に目を向けると木枝に【天然記念物】のハハジマクロメグロを発見、嬉しい!急いでシャッタ-を押す。写せた。下りの道は北側の登りの亜熱帯樹林の登山道を思わせる。15分程下

ると大剣先見晴所へ。の登それから30分で麓に到着。ガイド案内の2パ-ティ-20人程と出逢っただけの静かな山歩きが出来た。全行程が約4時間のコ-スだ。下山後、観光協会へ出向く。
←【山頂を示す標識プレ-トに紙を当ててクレヨンでこすると浮き上がる】登頂証を提示して登頂証明書を頂く。その後、2時間は母島の自然と歴史の探索に集中し【東京都道最南端】

まで南下。そして北へ。1985年まで捕鯨基地として使用された東港、母島北端の入江の北港を巡り、宿泊先のペンションへ戻った。海から見える清楚な建物で料理も美味しい。

4月6日(金)(晴れ)沖港(8:40)出港10:30-二見港12:40-船内泊-竹芝港15:40着-自宅18:00帰着
早めに宿を後にして出港までのんびり島散策をする。職場の異動や転校や友達のお別れのプレゼントのレイを朝早くから波止場に来て作っている人を見掛けた。ハイビスカス、ブ-ゲンビリアの鮮やかな生花のレイだ。贈られた人は船が出港すると【帰ってくる事を誓い】レイを海に投げると言う。見送る人は『行ってらっしゃ~い!』と声を掛け手を振るという話に「ジーン!」とくる。定時に沖港を出港する。投げられたレイの花が波止場に向かって一直線に続いている。4mの波浪で船は大揺れ、二見港には遅れて到着。波止場は多くの人で賑わっている。出港までの貴重な

《お世話になった島の皆さんのお見送りの伴走に『また来るよ~!』の気持が込み上げいつまでも手を振った。・・》

時間をお土産の時間に当て出港を待った。小笠原太鼓や港湾関係や宿、職員、住民、など全員集合のお見送りのセレモニ-を受ける。父島、母島、沢山の思い出をありがとう。帰りの船は二見港を出ると急に大揺れだ。船酔いの不安が湧いてきた。竹芝港に到着の頃は気分も落ち着き安心した。
・小笠原諸島は東京から約1,000㎞の距離にあります。北から聟島列島、父島列島、母島列島、その南西にある硫黄列島(父島から200㎞)さらにこれから離れて点在する孤立島(西之島、沖ノ鳥島、南鳥島)からなっています。

小笠原の自然
小笠原は亜熱帯気候の海洋島です。(大陸とつながったことが無い島)海を越えることのできた生物しかいません。このため海洋島にはコウモリ以外の哺乳動物や椎の木などのドングリ類のなる木は自然分布してなく、特殊な環境の中で小笠原の生物は進化してきたと聞きました。しかし、戦後の頃から人間が持ち込んだ移入生物が増加して生態系のバランスが崩されようとしています。ノヤギ、ノネコ、クマネズミ、グリ-ンアノ-ル、ニュ-ギニアヤリガタリクウズムシなどの外来動物やアカギ、モクマオウ、リュウキュマツ、シマグワなどの外来植物が小笠原諸島固有の植物を脅かしたり、また、それを餌や住みかとしている固有の動物の生息環境も脅かしています。
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ハハジマトカゲ

グリーンアノール・体長15~20cmのアメリカ原産のトカゲ
(緑色) 道路で見付けて撮影したので茶色ぽい

植物では在来植物441種のうち 161種が固有種で固有種の比率は37%です。陸産貝類は(カタツムリ) これまで106種の在来種が記録されていますがこのうち94%が固有種です。
今回の旅では自然の素晴らしさ、人々の温かさ、素朴さに触れることが出来ました。3泊4日の短い滞在でしたが『生活の原点はここに!!』と思わずにはいられませんでした。

ハイビスカス

ブーゲンビリア

ディゴ

ブーゲンビリア

セイロンベンケイ(乳房山)

パパイア 

ココヤシ

コブノキ

オガサワラビロウ 

マルハチ

この時期は山に咲いている花は少なく道路沿いに咲いていた花々です。

きれいな花

ゲットウ

ヒルガオの様な綺麗な花

グンバイヒルガオ

きれいな不思議な花

民家の庭先にストレリチアが

【天然記念物】メグロ(登山口の車のミラ-に)

私達が乗って来たクル-ザ- 南島(鮫池にて)

黒潮を横切る おがさわら丸

可愛い姿のははじま丸

【村越 智子記】




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