冬季「八ヶ岳」縦走

期間:2012年1月7日(土)~9日(月)



報告:松崎

1/6(金) 新宿駅(21:00)⇒茅野駅23:23)⇒旅館 わかずみ泊
1/7(土) 旅館 わかずみ⇒茅野駅(07:00)⇒渋の湯(08:00)
渋の湯(08:30)…黒百合ヒュッテ(10:40)…東天狗岳(12:00)…西天狗岳(12:30)…東天狗岳(12:50)…箕冠山(13:30)…夏沢峠(14:10)…オーレン小屋(14:40)泊
1/8(日) オーレン小屋(05:00)…夏沢峠(05:25)…硫黄岳(06:35)…横岳(08:00)…赤岳(09:55)…キレット小屋(12:00)…樹林帯(標高2550m)(12:55)泊
1/9(月) 樹林帯(06:10)…権現岳(08:05)…三ッ頭(08:50)…前三ッ頭(09:10)…天女山(10:50)…天女山入口交差点(11:10)…甲斐大泉駅(11:50)
甲斐大泉駅(12:09)⇒小淵沢駅(12:24-12:29)⇒高尾駅(14:48-14:55)⇒新宿(15:45)

1/6(金)
「今年一番の寒波が・・・」などとアナウンサーが読み上げる、そんな夜に山へ向かった。今回の目標は冬季の八ヶ岳縦走。渋の湯から天狗岳、硫黄岳、横岳、主峰・赤岳を越え、権現岳まで足を延ばして、甲斐大泉に下山するという計画だ。天気次第で、①天狗岳ピストン、②夏沢峠から美濃戸、③赤岳から美濃戸をエスケープルートにする予定だ。
特急の指定券をケチった結果、座席に座れず、デッキにザックを下ろして、その上に腰をかけた。大月でようやく座席に座れ、ウトウトしかけたころ茅野に到着した。雪は降らない予報であったのに、茅野の町は薄っすら雪を被っていた。今日は駅から数分のところにある「旅館 わかずみ」に泊る。部屋にトイレも風呂もないが、料金が安いので登山の前泊にはもってこいの宿である。 

1/7(土) 曇りのち晴れ
茅野のバス停に着くとすでに7、8名の登山客が並んでいた。その後、2名ほどが列に並び、10名ほどを乗せてバスは出発した。渋の湯に到着し、準備を進めているのだが、あまり寒さを感じない。「寒波・・・」と思い込んでいたため一枚多めに着込んで出発したものの、すぐに汗だくになってしまった。

渋御殿湯
唐沢鉱泉との分岐辺りでようやく涼しくなり適温になってきた。ほどなくして黒百合ヒュッテに到着した。ここにテントを設営して空身で天狗岳ピストン、テントに戻って宴会といきたいところだが、今回は縦走である。テント村を横目に中山峠に向かった。

黒百合ヒュッテ
中山峠から森林限界のところで、装備を改め、天狗岳に向かった。天気はこの辺りからかなり良くなってきた。

天狗岳
東天狗岳の頂上に到着した。まだ、雲は多いものの北アルプス、中央アルプス、南アルプス、奥秩父を望む、大パノラマを楽しむことができた。

東天狗岳から蓼科山方面を望む
今回は縦走ということで、西天狗はどうしようかと思案したが、天気も良いので、ピストンすることにした。

西天狗岳から根石岳・硫黄岳方面を望む
ここから先グッと人は減り、行き交う人はほとんどいなかった。根石岳を越え、根石山荘を横切り、箕冠山に到着した。

根石岳からの眺め(左:硫黄岳、右:西天狗岳)
ここからオーレン小屋へと向かうつもりでいたが、トレースがない!ラッセルで苦しめられそうだったので、夏沢峠経由でオーレン小屋に向かうことにした。

箕冠山
夏沢峠に到着すると小屋脇にテントを張れる場所があるので、オーレン小屋に行くのが億劫になってしまった。しかし、オーレン小屋に行けば、冬季小屋ある・・・明日の工程を考えれば、今日は体を伸ばせたほうが良いだろうと思い直し、オーレン小屋に向かうことにした。

オーレン小屋

冬季小屋内部(広くて清潔!)

なんと水が出ていた!
この判断は結果として正解だった。なんと期待していなかった水が出ていたのだった。冬季小屋はかなり広く、どこに陣取ろうか迷うほどだったが、結局、泊り客は私一人だったため、それも徒労に終わった。

1/8(日) 晴れ(強風)
暗闇の中、ヘッドランプを頼りに歩き出した。夏沢峠で身だしなみを整えて硫黄岳に向かった。樹林帯を抜けてからは強風にさらされ、ヨロケながらの歩行になった。空がようやく白んできた頃に硫黄岳の頂上(本当の頂上ではなく、標識のある所)に立った。

硫黄岳から横岳・赤岳・阿弥陀岳を望む
風が強く、ここに長居できる状態ではなかった。休憩は硫黄岳山荘と定めて歩き出した。硫黄岳山荘に到着し、後ろを振り返ると硫黄岳が朝日に照らせれていた。

朝日に染まる硫黄岳
小屋の影にザックを下ろして小休止を取った。気温はかなり低くようで、行動食のパンが袋から出すとみるみる凍っていった。ここから今日の核心部である横岳に入っていくため、装備を改めた。台座ノ頭、奥ノ院(横岳の主峰)、三叉峰までは特に歩行に困難はなかった。

台座ノ頭から奥ノ院、遠くに富士山を望む

奥ノ院(横岳の主峰)

奥ノ院から赤岳・阿弥陀岳を望む
しかし、鉾岳から二十三夜峰にかけては雪壁(雪が締まってなく、雪の下に岩がゴロゴロしている)の下降やトラバースがあり、強風の中、緊張を強いられる歩行となった。地蔵の頭を抜け、赤岳展望荘でようやく休憩を取ることができた。

赤岳展望荘から赤岳を望む
赤岳の急登がいつもよりもキツい!それもそのはずである、いつもはほぼ空身で登っているのだから。。一歩一歩、無心で登り、赤岳の頂上に達した。

赤岳頂上山荘より横岳方面を望む

頂上は満員!
ここで、美濃戸への下山も考えたが、権現岳方面に目を凝らすとトレースが付いていた。「これならいけるかもしれない」と考え、とりあえず、キレットまで進んでみることにした。竜頭峰にかけては岩登りである。ここで、真教寺ルートを登ってきた二人組みのパーティーに出会った。ラッセルが大変だったとのことだった。竜頭峰からも岩登り、ガレ場の急下降が続き、横岳の通過よりもさらに緊張感があった。

断崖絶壁に挑むニホンカモシカ?(中岳の直下)
樹林帯に入り、勾配も緩んだ所で、権現岳方面から来た単独行の方と出会った。編笠山から権現岳を抜けここまで辿り着いたとのことで、昨日の内にキレット小屋まで入る予定がラッセルを強いられ権現岳でビバークしたとのことだった。

左から阿弥陀岳、中岳、赤岳
程なくしてキレットに到着し、ここで休憩した。 時間的には権現岳を抜け、前三ッ頭くらいまでは行けそうではあるが、八ヶ岳の核心部を通った疲労と、明日に登りをとっておきたいと言う理由に、キレットから一登りした樹林帯の中にテントを設営することにした。

左から奥に北アルプス、手前に山麓、阿弥陀岳、中岳、赤岳

1/9(月) 《山》曇り時々雪(強風) 《麓》晴れ
樹林帯にテントを張ったため、風の影響はほとんど受けなかったが、上部では強風が吹き荒れていた。幸い雪は降らなかったようで、トレースはしっかりしていた。視界は100m前後で目指す頂は見えないが、歩行には支障がない状態だった。天候の悪化で、赤岳に引き返すべきか、権現岳に進むべきか、悩んではみたもののハッキリとした判断材料がない。悩んでいても埒が明かないので前進を選ぶことにした。
旭岳までは徐々に勾配が増していき、頂上直下では岩登りとなった。強風の中、縦走装備の身にはかなりハードな登りが続いた。やっとの思いで、旭岳に達したのものの、そこから稜線は細くなり、強風による滑落を意識しながらの通過となった。ゲンジー梯子(61段の梯子)を慎重に登り、「さあ、もう少しで権現岳だ」と思って岩登りを続けていると、分岐が現れた。地図を確認したところ、この辺りには権現岳の頂上の分岐しか記載されていないし、コンパスを当てても方向は合っていた。しかも、分岐の先のトレースはどちらもハッキリしていた・・・(ただ、気になるのは権現岳の標識がないことなのだが・・・)
私はこの時、ここを権現岳だと思い込み三ッ頭と思われる方向のトレースに入ってしまった。すぐに馬の背が始まり、次いで急下降が続いた。権現岳から三ッ頭方面の登山道にそれほど厳しいイメージを抱いていなかった私は面を食らった。「これではこの縦走中、最も困難な場所となってしまうじゃないか」などと考えながら下っていった。その後も岩場はどんどん勾配を増し、手がかりも乏しくなってきた。支尾根と思っていた山容も切れ落ちた状態になっていた。「これは明らかに一般ルートではない!」と思い直し、GPS端末で確認すると、ルートからかなりズレていることがわかった。その後も踏み跡はあるので、これはクライマーのトレースのようだった。
迷い込んだ分岐まで登り返し、もう一方のトレースを進むと、程なくして権現岳に到着した。視界があれば、まず道迷いをしないで済んでいたであろうが、疲労や不安などが相まって、あそこを権現岳と判断してしまったようだ。反省!!

権現岳頂上直下(天気が悪いので頂上には達せずに、直下を通過した)
権現岳から三ッ頭は尾根も広くなり、勾配も緩くなった。朝から緊張し通しであったので、一気に気持ちも緩んだ。三ッ頭でようやく小休止を取ることができた。

三ッ頭から権現岳方面を望む
三ッ頭から下るにつれ、風も弱まり、視界も広がってきた。

前三ッ頭
前三ッ頭からは樹林帯に入り、ぐんぐん高度を下げていった。清里の町も見渡せるようになり、今回の山旅の終わりが近いことが分かった。

この尾根をどんどん下っていく
高度を落とすと天気も良くなり、気温も上がってきた。早朝に苦しめられていたのがウソだったように、富士山がその美しい山容を見せてくれた。

天ノ河原から富士山を望む
天女山には駐車場があるので、ここからは車道になると思いきや、天女山入口交差点までは山道が続いた。

天女山入口交差点
ここからは車道をひたすら甲斐大泉駅まで歩く(徒歩1時間)。雪靴には堪える歩きだが、今回の縦走を回想しながら、とにかく歩いた。本来であれば、甲斐大泉駅近くにある「パノラマの湯」で汗を流して帰りたかったのだが、ちょうど駅に着いた時から10分後に電車がきてしまう。これを逃すと次は2時間後となってしまう。泣く泣く温泉を諦めて、小海線に乗り込んだ。

かわいい看板
中途半端な時間にもかかわらず、小海線の車内は混んでいた。小淵沢の乗り換えもスムーズにいき、鈍行に揺られながら帰途についた。




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