奥穂高岳・西穂高岳・焼岳縦走

期間:2015年10月5日(月)~7日(水)



報告:井原

退職後本格的山歩きを再開し4,5年前北アルプスを再訪するようになった。(2011年北関東自動車道が全面開通し北アルプスにマイカーでアクセスできるなんて隔世の感があった)2011年8月に北穂・奥穂・前穂の縦走、2012年8月槍からの大キレット越で前穂に縦走できた。いつも奥穂高岳の後ろに聳えるジャンダルムの威容が印象的であった。

写真0 ジャンダルム フランス語で衛兵と言う意味。
     ここに至るには最も厳しい馬の背・ロバの耳を越え無くてはならない。

次はジャンダルムを越える奥穂高岳・西穂高岳の縦走と憧れていたが、槍からの大キレット越縦走で燃え尽き感があって北アルプスから脚が遠のいていた。体力も低下しているが、若い時の怖いもの知らずで突っ込んでいく勇気が失せている。特に悪天候に捕まったらひとたまりもないと思う。良く言えば「天候の機嫌の良い時に遊ばさせていただいているんだ」という慎重、悪く言えば天候的困難には遭遇しないようにと怯懦になっている近頃なのである。登山スピードは20歳台時の半分に衰えているのはしかたないとしても、水泳教室での準備体操の片足立ちでふらついて「オットト」となり(これ岩登りや岩稜歩き時は非常にまずいんじゃないか!)バランスが特に劣化しているを実感している。(これは加齢に伴う一般的傾向と聞く)まずは秋の移動性高気圧に日本中が覆われる時を狙っていた。そして・疲労して集中力低下での転倒滑落を抑えるため荷を軽くする。このためテント泊はやめて小屋泊まりにする。
・入山コースは未経験の奥穂高山荘の西側のガレの沢を登ってみたい。下山は難所突破に手間取り西穂高岳のロープウエーの稼働時間に間に合わないかもしれない。それならば西穂山荘にも泊まってまだ行ったことのない焼岳も登って周回したい。どっぷり山に浸りたい。
この方針で登山計画書を練り会長に届け10/4(日)13:00家を車で出る。3時間半松本まで高速道を乗り継いで、国道158号を上高地に入る釜トンネル前で左折して岐阜県に入り、新穂高温泉に向かう。6時間近くかかったが、登山口を確認してから深山荘の登山者無料駐車場で車中で仮眠する。

1日目
4:22発。登山口の登山センタまで約10分である。登山届を投函する。ここから蒲田川右股谷林道を北上、白出沢出会で右に折れ白出沢の山道に入る。

写真1 重太郎橋

右岸に徒渉の場所には木材柱を4本束ねた重太郎橋があり山腹に登るはしごがある。共にガレの鉱石沢、荷継沢を横切っていよいよ白出沢のガレに入る。ここまでは順調だった。ガレの登り標高差800mに取り付く。道はないのに等しい。白ペンキで岩にマークしてもその岩が流されて動いてしまいあまり用をなしていないらしい。ザレたところは急傾斜のため却ってスリップする。歩数を数えて気を紛らわせて登る。歩数は増えても出来る限りステップ(高さ)は大きく採らない(=太腿の引き上げ量を小さくする)よう心掛けた。ストックを使用、腕は疲れるが有効と考える。

写真2 左は荷継沢、ここは横断して右の白出沢、標高差800mのガレに取り付く

写真3 道は無きに等しいガレの登リ。白出沢のコルはガスの中

穂高岳山荘のある白出沢のコルはガスがかかっていて時々しか見えない。1時間に300mのペースで登る。ヘロヘロ状態で穂高岳山荘に着く。コースタイム9時間とあるので上出来の8時間の行動時間で登れて満足する。穂高岳山荘は国内有数の立派な山小屋でどんなものかと一度は泊まってみたかった。

写真4 コルの穂高岳山荘  午後は岐阜側からガスが巻くようだ

写真5 涸沢はガスかかっていない 屏風の頭とその左上のピラミダルな山は常念岳

今日の泊まりは150名程で小屋側にしたら空いているのだろうが私の感覚では混雑している。部屋は「乗鞍岳」、最大定員12人だが今日は6名で一人一畳で寝られる。一休みしてから涸沢岳の頂上踏んでおくがガスで展望はなし。相部屋で75歳の単独行の神戸の男性がいて脱帽。私も「歳だ」なんて言っていられない。食事は美味しいのだが席がキツキツで身動きもできないのは不快。身動き取れないので米飯や味噌汁を近くの人に他人の分までよそってもらったりして、和やかにおしゃべりに花がさくのはいいのだが。夕食17:00朝食5:30で小屋側のペース。要は狭い場所でオーバーユースなのだろう。お湯も有料という。お湯ぐらいもらえるだろうと軽量化のためコンロ・コッヘルを持って来なかったのでお茶も作れず寂しい思いをした。大した重さでないのにと悔やんだ。

2日目
暗いうちから動くのは危険なのと霜でのスリップを避けるために明るくなってから出発。天気は上々ピーカンで期待見通り。気象条件は問題なし。体力が保つのかが問題だ。

写真6 奥穂高岳から踏み出すところ。岩乾いていてよかった

奥穂高岳頂上を踏んで西穂高岳に向けて踏み出す。見通し良過ぎて馬の背のナイフエッジは高度感で脚すくむ。幸い霜は見られず岩乾いていて助かった。怖い反面(年一度だけ受ける岩登り講習会の成果を発揮できて)面白くも思う。ロバの耳は急斜面で登り降りトラバースがある。極力鎖には頼らず岩にホールドを求めるように心掛けた。ジャンダルムの奥穂側の直登ルートは白バツがマークされている。素直に巻道で山頂へ登る。

写真7 40年前はいなかったエンジェルと  後ろ左は笠ヶ岳

写真8 これからたどる縦走先 西穂高岳 焼岳。その後ろ乗鞍岳、更に御嶽山

馬の背・ロバの耳が一番怖かった。後は落石を受けないよう起こさないよう集中力を切らさず忠実にマークを追う。飛騨側を巻いて天狗のコルに降りる。ここで西穂までの半分と言う。天狗沢は素人考えでは昨日登ってきた白出沢より楽そうに思えたが。

写真9 天狗のコルから天狗沢を望む

この頃10:00過ぎからは雲が出てくる。天狗岳から間天のコルの下りには逆相スラブがある。乾いていたので鎖掴まずに登山靴底のフリクションで下れた。間ノ岳は浮石が多いというが今回余り感じなかった。徐々にガス出てきて山容よくわからず、ただマークを追うだけになってしまい、高度感失せる。

写真10 前間ノ岳後ろが西穂高岳  天狗の頭より

写真11 西穂高岳ではガスで展望のぞめず

ようやく西穂高岳過ぎると危険地帯越えたか?直下の下りのキツイところ越えたところでストックを出して使う。ピラミッドピークを過ぎ西穂独標のピークを越えるとようやく道は穏やかになる。西穂山荘には15:20入る。大きくて落ち着いた小屋である。本日は60名程と言う。夕食17:30朝食5:00でリーゾナブル。お湯は有料なんて世知辛いことは言わない。

写真12 3日目出発前

3日目
6:00過ぎ出発。今日は一番いい天気でハイキング気分。苦しい所は焼岳直下の登りだけである。すぐ上高地に下る道を分け、徐々に高度を下げて焼岳小屋に至る。槍見台は2250mのピーク。穂高岳方面眺められるが本当に槍ヶ岳も見えるのかな?焼岳小屋は小さい静かな小屋である。

写真13 焼岳 中央のコブが北峰

急な登りは標高差300m足らず 一回だけ、昨日一昨日のことを考えると楽だ。北峰2444.3mに登頂、中の湯からの登山者が多く山頂は混んでいた。緑色の水の火口湖がありそれを外輪山の壁がぐるりと覆っている。

写真14 焼岳北峰から南峰(こちらは登頂禁止)を望む

写真15 焼岳北峰山頂にて 後ろは奥穂高岳-前穂高岳間の吊尾根 右下が上高地

景色楽しんでから下山、中尾温泉に下る。山道はジグザグが切ってあり足に優しく余り疲れを感じなかった。こちらは登山者少なく会ったのは下山者1名だけだった。白水の滝を見てやがて車道に出る。味気ないが身体的には楽である。2時間近く歩いて、深山荘の駐車場に着く。ロープウエーの施設偵察がてら(深山荘の登山者用無料駐車場が一番能率的であることを知る)下山届を提出して、ひがくの湯で入浴、汗流しさっぱりして16:40帰途につく。18:00に松本ICに入り梓川SAで夕食摂ってから時間調整を兼ね(高速道路を0:00を超えて出ると深夜料金適用されるので)2時間ほど一眠り。これ大正解で帰途の車は眠気知らずで運転できた。


後学のため費用詳細記す 単位円
高速道路 水戸-松本(休日料金3割引) 4,980
安房トンネル 行き(休日料金3割引) 540
弁当(夜用)ムスビ(1日目昼用)  600
穂高岳山荘 1泊2食(カード使えた) 9,600
西穂山荘 1泊2食(カード不可) 9,500
生ビール 800
入浴料 ひがくの湯 700
帰り ラーメン+ムスビ110 860
安房トンネル 帰り    770
高速道路 松本-笠間西(深夜料金3割引) 4580
ガソリン代 水戸 (16.55L@121) 2,003  参考全距離800km16km/L
       松本(21.76L@138) 3,000
合計 37,933



    


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