大菩薩嶺・大菩薩峠~小金沢山~牛奥ノ雁ケ腹摺山~昆虫館
(介山荘泊り)
期間:2017年11月5日(日)~6日(月) |
水戸を午前5時に発つ。快晴雲ひとつない登山日和である。
いつか大菩薩嶺・峠に行ってみたと考えていたが、何となく行きそびれていた。友人が「秋の大菩薩はすすきが素晴らしいよ」と言ってくれた一言に触発されて出かけることとなった。
11月5日(日)唐松尾根―雷岩―大菩薩嶺―賽の河原―大菩薩峠―介山荘
上日川峠を10時20分に福ちゃん荘ルートで雷岩を目指して歩き出す。このコースは唐松尾根と呼ばれ、下部はカラマツ林が続き落葉した裸木が晩秋の風を受けている。緩やかな登りが続き、登るにつれて傾斜が強まり、視界が開けた上部はかなりの傾斜となる。登り詰めたところが雷岩で1時間少々かかった。広けた頂上部は高さ数メートルの岩塊が盛り上がっている。富士山が目の前に存在感を示し、南アルプスの山塊が屏風のように広がる大パノラマが展開する。そして大菩薩湖が眼前に水面を輝かせている。登山は気力に体力と良き仲間、それと天気が良いことが大事であるが、今日は全部備わっている最高の登山日和である。昼食と休憩をとり、鬱蒼とした針葉樹林の中を10分程進むと2057mの大菩薩嶺である。周囲は樹林に囲まれて展望はなかった。雷岩まで戻り、南東方向に尾根道を進む。草地の尾根が続き、右手側に富士山、南アルプスの大展望が変化して行く様は楽しい。前方に見える妙見の頭を巻いて緩やかな下りが賽の河原まで続く。ここは旧の大菩薩峠といい、秩父と甲府を結ぶ交易路として活況を呈していたが、明治時代になってコースが変わり寂れていったという。確かに峠という雰囲気が残っている。少し登り返すと親不知ノ頭に出る。目の下に今宵の宿「介山荘」がみえる。見返すと、雷岩から歩いてきた尾根を全部見渡すことができる。笹原が風に吹かれてさざ波のように見え、西に傾き始めた太陽の光を浴びて黄金色に輝いている。
3時前に大菩薩峠(1897m)にある介山荘に着く。4時40分ごろ南アルプの蝙蝠岳の山頭に赤々と輝く太陽が沈む。介山荘は10年ほど前に建てられたそうだが、中里介山は時代小説「大菩薩峠」を介山荘の管理人の親父さんが開いた「勝緑荘」で執筆したという。勝緑荘は1932年に開設され、中里介山が命名した。そんな関係で新しく小屋を作る時に「介山荘」と命名したのかな。このことを管理人に聞くのを忘れた。夕食はポテトサラダ他沢山のおかずとカレーライスである。美味しくてお代わりが続いた。宿賃冬季は7500円、夏場は7000円である。建物は清潔で、快活な管理人夫婦がよかった。二人での切り盛りなので宿泊客は20人である。
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大菩薩峠から富士山夕景 |
大菩薩峠 |
甲州市の夜景 |
雲海に上がる朝日 |
11月6日(月)介山荘―熊沢山―石丸峠―小金沢山―牛奥ノ雁ケ腹摺山―昆虫館
介山荘から北東に向かって立つと、右手が太平洋側で左手が富士山や南アルプスのパノラマが展開する。したがって、同じ場所で御来光と日の入りが見られる。今朝の日の出は午前6時である。小河内ダムの水源の山々が広がり、遠くに雲取、男体山、白根山が眺望できた。残念ながら筑波山は雲がかかり見られなかった。6時12分、遥か彼方の雲海の上に朝日が顔を出した。瞬く間に上がってくると、光線の屈折の関係からか上と下がつぶれた「だるま」みたいな朝日となった。西の中天には白月が残っていた。太陽が高度を増すと富士山や南アルプスの山並みが赤く染まりだした。至福の時である。
午前7時過ぎ、小金沢山を目指して出発する。すぐに針葉樹の林を抜ける傾斜のある登りとなる。7時30分に熊沢山の標識を過ごし、笹原を下ると15分程で石丸峠に着く。上日川峠方面の道を分かれて、5分程で牛ノ寝通りへの分岐がある。分岐から10分程で天狗ノ棚の絶景地である。8時4分である。東も西も展望が開け、奥多摩や丹沢から富士山、南アルプスの山々まで眺めることができる。ここから先の山中は倒木や露岩が転がり、木の根が張り出したりして足元は悪く、道標や目印が少なく何度となく判断に迷った。9時20分小金沢山(2014m)に着く。三角点があり、山梨百名山の標識がある。ここまでに出会った登山者は一人である。休んでいる間に大峠から来たという登山者が着いた。展望が素晴らしい。
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大菩薩峠朝の富士山 |
石丸峠 |
小金沢山 |
小金沢山から富士山 |
小金沢山から牛ノ奥雁ケ腹摺山までは林の中を何度か上り下りを繰り返して尾根を歩く。途中に笹原が点在している。牛ノ奥雁ケ腹摺山(1990m)に10時25分到着する。山頂からは500円札の裏に印刷された富士山の風景と同じような景色が眺められる。札の方は雁ケ腹摺山という別の山から撮影した風景との事である。似たような山の名前でややこしい。下り道は黒岳方面が左端で道案内は出ているが昆虫館方面には標識がない。黒田岳方面から男の人が一人登ってきた。笹に覆われた西方面に向かう踏み跡を辿り下ると、道がはっきりしてくる。下り始めてすぐにあたり一面が異様な光景となる。一面が立ち枯れした木々が林立している。途中、雁狩峠のトンネルの入り口が見える所がある。山の名前は分からないが、雁狩峠の上方にあるから甲武信ケ岳など秩父の山並みであろう。さらに下ると樹齢を重ねた巨木に出会う。伐採跡までくると視界が開けて日川林道に出る。11時50分に着いたから1時間20分かかった。ここから右手に折れて数十メートル進み、県道バス停→の板切れを目安に歩くこと30分、12時25分にすずらん昆虫館に到着する。車を回送するために別ルートをとったリーダーとここで落合い、2日間の汗と疲れを取るため天目の湯に向かう。
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牛ノ奥雁ケ腹摺山 |
500円札似た富士山 |
異様な立ち枯れ林 |
雁狩峠 秩父の山々 |
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昆虫館前の登山口 |
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晩秋の好天に恵まれた2日間であった。周りの山々は錦秋に彩られ一枚のキャンパスの中にいるような錯覚を覚える。大菩薩峠の素晴らしい展望も好天あっての事、介山荘との管理人に「日頃の善行が報われた」と言ったら、そう言い切れるのは凄いとほめていただいたが、内心は「何ふざけたことを」と思ったに違いない。土産物のなかに印伝の財布があった。甲州に来たら伝承工芸の印伝である。大法螺を吹いた心苦しさではないが大枚をはたいて財布を求めた。
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蝙蝠岳に沈む夕日 |
介山荘 |
南アルプスと雲海 |
雲海に浮かぶ朝の富士 |
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